前回、私が影響を受けた音楽家や楽団、そして、私が出会った音響の専門家のお話しを始めました。 しかし、彼ら音響の専門家と出会う前に、私はすでに'Altec A7-500-8'との悪戦苦闘の日々を送っていたのです。このあたりはもう少し説明しておきたいと思います。

私がトランペットを始めた中学時代やオーディオ趣味に第一歩を踏み入れた大学時代、多くの住宅は遮音性(気密性の低さも一因)が低く、この面では音楽の再生に向いているとは言えませんでした。(当時のオーディオ室の写真は2016.12.14号に掲載しています。
必要かつ十分な音量が出せなければ、せっかくのステレオも実力は発揮できません。また、人の聴覚の特性は、音量を下げていくに従って高音域と低音域が聞こえにくくなります。 この高域と低域の補正がうまく出来なければ、俗に言うドンシャリ音になりかねません。
でも、これが『心地よい音』と思っている人には、それはそれでよしとし、他人がとやかく言うこともありませんが。

そんなことから、私がオーディオルームを備えたマイホームを建てた際の最優先事項は、『望ましい音量』を確保するための『遮音性能』でした。趣味が隣家や家族に迷惑を掛けることになれば、間違いなく彼らは私のオーディオ趣味に理解を示してくれないからです。
そして、完成したオーディオルームに、決断から2年以上の歳月をかけて手に入れた念願のA7が収まったのです。 この時期の映像が『オーディオ趣味・・・私が影響を受けた音楽と音響専門家たち』のモノクロ写真です。(2016年02月27日掲載)
では何故、A7にそれ程こだわったのでしょうか。
※今も現役SPたち
それは、学生時代の映画館の音響への興味から始まり、社会人の仲間入り、そしてかなり後になり名古屋でのポール・モーリアカーペンターズなどのコンサートで聴いたSRの音!で決まったと言えるでしょう。ポール・モーリアのコンサートでは客席の中央前方の一角に音響調整卓らしき機器が並び、音響監督?やオペレーターが付きっきりで作業をしているのを間近に見える席!しかも、オーケストラのメンバーの広がりに合わせた間隔で、舞台左右の客席寄りに2本1組で計4本・・・これは正しくA7 !  2,000人も収容できる会場でのA7の実力、勿論、演奏の方も素晴らしく、まだ若々しい頃のポール・モーリアさん、独特の指揮ぶりを含めて十分満喫しました。亡くなられてから、もう10年も経つのですね。
エーゲ海の真珠』をはじめ、私のエレクトーンのレパートリーの多くが彼の演奏のコピーだったことを思うと、とても残念です。

【Altec A7-500-8 と JBL  Paragon D44000WXA】
                    (本棚の古いオーディオファイルの中からこんなものを見つけました。)
※●Altec A7 and JBL Paragon H1400
さて、オーディオショップ等でそれまでも度々聴いていたA7、他のスピーカーとは明らかに鳴り方が違うと感じていました。ピアノやボーカル・・・的確には説明できませんが、生々しくて、とにかく素晴らしかったのです。 但し、店舗で聴かせてくれた曲の多くがジャズでした。そして、これがその後、我が家でA7と悪戦苦闘することにつながることになったのです。とは言え、今までじっくり聴き比べて選んできたスピーカー、ユニットのタイプには何らこだわりがなかったにも拘らず、写真のようにトゥイーターは全てホーン型ですね。

どうやら、ホーンの鳴り方が好きだったのでしょうね。学生の頃、映画館の音響・・・一体どんなスピーカーから鳴っているんだろうか、と素朴な興味がわきました。普通ならばここで終わるところ、よく行った映画館(ロードショー館でなく、三番館。昔はロードショーが700円位、その後は350円ほど? ・・・ 学生にはこれ位でないと度々行けません。学食の定食が100円台の頃です。)最終回の映画が終わって観客がいなくなるまで粘って、スクリーンの後ろや映写室を見せてもらえる程、劇場で働く人たちと親しくなりました。残念ながら、その映画館にAltecはありませんでしたが・・・。
  
別冊ステレオサウンド「ALTEC」(記事のクリックで拡大します)・・・ この出典は今となれば不明です。
別冊ステレオサウンド・ALTEC-02
Altec A7-500-8を取得した人のブログかと思いますが、2006年以前の投稿でもあり、もはや記事の掲載への許可が取れません。万一支障があるような場合は、是非連絡先を記載してご指摘下さい。A7-500-8で音楽を楽しんでいる私、内容に共感しています。 
 
【Altec "Voice of The Theatre" 】=brochure=
Voice of the theatre catalog 001
※こんな資料も出て来ました。40年以上も経つと変色等もひどかったのですが、上の通り何とか修正できました。(笑)  導入前にいろんなショップで、A7は勿論、A5もじっくり聴きました。大規模な映画館や劇場等を想定したA5は良くも悪くもとにかく強烈で、 とても私の手に負えるようには思えませんでした。それに比べ "A7" はむしろまろやかで繊細な印象だったのです。そして、その鳴り方は憧れの音そのものでした。参考までに掲載しました。

悪戦苦闘
A7は元々映画館用に作られたスピーカーで、小出力のアンプしかなかった時代、映画館の後方まで十分な音量でセリフや効果音・音楽が聞こえるように設計されたものです。しかも、スピーカーの前には丈夫なスクリーンが張ってあります。小さな穴が規則正しく空いているとはいえ、スクリーンを通して明瞭に音を伝えるのは大変なことです。周波数帯域については広帯域化より、必要な音声を明瞭に伝えるための中音域の充実を求めた訳です。
技術的なレベルは別として、その頃はそれでもよかったのでしょう。
その後、劇場用スピーカーは幾多の改良がなされ、A7も高域は20kHzまで再生が可能となりましたが、これをスクリーンのない家庭に持ち込んでも、かまぼこ型の周波数特性(ドンシャリの逆)を適正に補正しなくてはかん高いばかりで、とても聴けませんでした。
これが、悪戦苦闘の概要です。

そんな時に出会えたのがマーク・ウレダ氏だったのです。
講演とその後のお話しで、私が興味のあるところを抜き出してみます。というより、講演の主題である『Apparent Apex Theory』は私ごときに理解できる筈もないので・・・。
mantaray horn AB+
 ※写真の左は、その時マーク・ウレダ氏から頂いたサインです。

・アルテックのスピーカーは昔から軽いコーン紙能率の高さを優先してきた。(音楽再生 時に瞬発力があり、楽器のリアル感が失われにくい。)
高能率なスピーカーが、デジタルサウンドの広いダイナミックレンジの再生には不可欠。
・1940年代は映画館用の設計で周波数レンジも狭かったが、今では(お話しの当時)コンピュータの活用と素材や技術の進歩によって、使用目的に応じたスピーカーを作れるよう になった。
・アルテックにとってデジタルサウンド (CD・現在はネット配信の楽曲・映画館の音響等)は大歓迎のソース。
・必要な周波数帯域をバランスよく調整することで、どんなジャンルも十分再生できる。等々 ・・・・。そして、私との会話の最後に『私もA7を愛用しているよ。』と。
     (ウレダ氏は日本語を話しません。ついでながら。)
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その後、我が家のAltecの周波数帯域ワイド化に挑戦、A7の守備範囲には手を加えず、その良さを残しながら、JBL 2405H用に8kHz以上のハイパスフィルターを作り、これでカバーすることにしたのです。
勿論、氏がJBLに移られる(2010年)ことなど、私は予想だにしなかったが、我が家でのAltecとJBLのコラボ・・・・不思議な縁ですね。
また、重低音強化のためサブウーファーを設計、これも2年がかりで製作
これの駆動は  “dbx Dynamic Subharmonic Synthesizer” で超低域を抜き出し、専用のアンプで2本のスピーカーをパラレル接続で鳴らしていました。現在のように小型で高性能なものがあったなら、そんな苦労は不要だったのに・・・。
1本55kgのこのサブウーファー2本、その後20年近くA7の台を兼ねていたが、10年程前に私の音楽ソースのデジタル化の波に押され、A7の持ち味でもある張りのある締まった低域をパソコンで調整することも可能になり、廃棄となった。(※近い将来、この秘策を!)
いよいよ、我が趣味もデジタルサウンド時代への移行となりました。(※10/24をどうぞ)

【JBL 2405Hについて】 
JBL 2405H -01
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ところで、いかにスピーカーに特化したお話しとは言え、メインスピーカーの A7-500-8や元メインだったPioneer CS-100、CS-770以外のオーディオ機器はどうなっていたの?という質問、ありですね。アンプ等の機器、一部は前回の写真で登場していますが・・・使わないものはお払い箱。そうです! これも断捨離精神の餌食・・・😢  でも、これは次回までにできるだけ写真を探してみますの・・・。 愛犬レオンと愛車
  レオン君、登場はもう少し待ってね。 スポーツクーペRX-8』をバックにすまし顔のレオン。
  怪人二十面相ならぬ、愛犬二十面相 カメレオンレオン、近々登場! 乞うご期待!