大変ご無沙汰いたしました。何とか時間が自由に使える状況を迎えることが出来ました。 そして、2週間程かかりましたが、フィルム時代の映画技術編にたどり着きました。
技術編』と言っても、そんなに堅苦しいものではありません。私はこの道のプロではありませんからね。多くの映画を見て来て、私が不思議に感じたことや疑問に思ったことなど、スクリーンの裏側から解き明かしてみたいという好奇心から進めたものです。
皆さんが退屈しないよう、所どころに懐かしい映画のポスターなどを散りばめてみました。但し、ポスターの順番等には、特に意味はありません。では、どうぞお付き合い下さい。
 

【懐かしい70mm映画①】写真のクリックで拡大します。(2回目のクリックが標準の大きさです。)
②Lawrence of Arabia +
今回は、懐かしいフィルム時代の映画・・・特に大画面用の70mmフィルムで公開された映画を中心にお話しします。中でもシネラマD150等、若い人たちにとっては経験したことのない巨大湾曲スクリーンへの映写! そして、そのための興味深い技術面での工夫などにも触れてみたいと思います。 ところで、『大画面用の70mmフィルム』って何か変な言い方ですが、70mmというのは上映用フィルムの規格で、スクリーンの大きさを表わす訳ではありませんから、敢えてそんな表現をしてみました。 このブログで『グランプリ』👈に触れた号へはクリックを!
 

Pictureville Cinema(UK)
】 ピクチャーヴィル・シネマ(英国)    
① Cinerama Screen & Cinemascope
300席ほどの小振りなシネラマ劇場ですが、科学技術や映画文化等の保護や保存を目指す活動の一環として、その存在価値は非常に高いと思っています。
人間と比較してもそれ程大きなスクリーンではありません。とは言え、湾曲スクリーンが指定の細いテープで作られているので、本格的なシネラマ上映への意欲が感じられます。
    (スクリーン部分に細かい縦じまが見えます。これについては後で触れることにします。)
スクリーン全景・・・元祖シネラマの他、70mmのTodd-AOD-150Super-Cinerama も上映可能でしょう。(注:3台の映写機で上映するシネラマをここでは便宜上元祖シネラマ』としています。)
35mmのスタンダード版からワイドスクリーン版を上映するフラットスクリーンは、湾曲スクリーンの前に下りて来ます。 シネラマ・スクリーンとドレープ・カーテン ・・・  さらにフラットスクリーンがあっては音響面に支障が出るためスピーカー群も下りて来ます。
 このスピーカーは、Electro-VoiceTS9040D-LXのようです。こちらも趣味として興味のある部分です。細かいことが気になるのが…私の悪いクセなので・・・(笑)
ワイドスクリーン設置完了・・・音を通すための小さな穴が開いてますが見えませんね。
 
以上、英国 国立科学・メディア博物館National Science and Media Museum)にあるピクチャーヴィル・シネマの説明でした。〔補足:1992年~1993年にかけてブラッドフォードのライブラリー・シアターは、シネラマから70mmと35mm、さらには4Kデジタルまで上映可能な劇場に改装されました。 現在、3台の映写機を同期させての元祖シネラマ上映が可能な劇場は、ここピクチャーヴィル・シネマと米国の2館シネラマドーム (Cinerama Dome)シアトルシネラマ (Seattle Cinerama) の3館だけとなっています。〕
                                   【懐かしい70mm映画②】
 70mm D-150 Cinerama Posters
さて、今回のテーマのひとつ、半世紀以上も前の映画館の巨大スクリーンの登場は、テレビジョンの誕生とその家庭への普及に危機感を抱いた映画製作会社の対抗策として考えられたものでした。これは50年以上も前のことですから、若い方にはそんな理由は理解出来ないかも知れませんね。  IMAXを除けば、現在多くの映画館はそれ程大きなスクリーンを備えていない上、画面のアスペクト比(幅と高さの比)も、ハイビジョン(16 : 9)に近いビスタサイズがほとんど・・・これでは、映画館ならではの大画面で、しかも アスペクト比が2対1以上のスコープサイズの魅力が味わえません。 但し、大画面や横長のスコープサイズが、直接映画そのものの良否にかかわる要素でないことは言うまでもありませんね。
 

【D150用 多目的スクリーンでの画面比較】(参考:当時のスクリーン・システム営業用資料)
③D150用の多目的スクリーンでの画面比較 H552
上図は70mm "Dimension 150" 対応スクリーン・システムの使用で、フラットスクリーンやスピーカー群を別に揃える必要がない点(多目的)が売りの昔々の営業資料の一部です。 
 

初期のシネラマは、同期させた3台のカメラで撮影した3本の35mmネガフィルムから焼き付けた3本の35mmポジフィルムを同期させた映写機3台で巨大湾曲スクリーンへ投影するものでした。  また、音響用にはさらにもう1本の35mmフィルムを7チャンネル磁気サウンドトラックとして使いました。かなり大規模ですね。
こういったことに加えて、このシステムでの映画製作は、使用レンズをはじめとした撮影上の制約も多く、制作費が高額となるばかりか劇場側の設備投資も大変なものでした。
そこに登場したのが、『D-150, Todd-AO, Panavision70』といった70mmフィルム1本での大画面映画や35mmフィルムのワイドスクリーン映画のシネマスコープです。 
 

【大画面:フィルム時代の上映方式例】シネラマ、Todd-AO、D-150、シネマスコープ等
⑤photos furnished by Joe Kelly of D150
 ①のスクリーンに70mm映写機からを中心角120度の円弧で投影、そのイメージはSuperCinerama(スーパーシネラマ)Todd-AOD-150等の上映が出来ました。
 (参考映像・・・ Smilebox Cineramaで2001年宇宙の旅』イントロをご覧下さい。) 
 ②35mmフィルムのワイド設定のため、スクリーン③の上部と両サイドにブラックマスクが現れます。  がその投影イメージです。 CinemaScope Panavision等々、35mm映写機にフィルムの横幅を2倍に拡大するアナモフィックレンズを装着して投影します。 
 ④・・・費用面やいろんな制約から消え去る運命を背負った3台の35mm映写機を使った本格的シネラマ (Cimerama)についての説明図です(※但し、リンクはSmilebox版です。)
 上映に際しては、3台の映写機やサウンド用フィルム、各画像の明度や繋がり調整などの複雑なコントロールを必要としましたが、観客にとって未経験のその大画面は大変魅力的でした。 その魅力は映写機3台がそれぞれ湾曲したスクリーンの3分の1の範囲を受け持ち、横に並んだ3つの画像の繋がりを滑らかにするため、中央画面の両端と左右の画面にわずかな重なりを設定し、人の視角に近い146度をカバーする大迫力にありました。
 しかも、巨大湾曲スクリーンの映像は目を見張るほど鮮明で明るい映像だったのです。
 その訳は、普通の35mmフィルムの映画がパーフォレーション4個分の1フレーム毎秒24コマで投影するのに対して、パーフォレーション6個分を1フレームとし、これを毎秒26コマで投影する映写機を3台使用したことにありました。下の写真がそのイメージです。●John Mitchell提供シネラマフィルム映像 H700
※3本の35mmフィルムの映像をスクリーン上でひとつにつなぎ合わせます。 贅沢で良質な画像・・・納得出来ますね。
 右は大きさ比較用の35mmフィルム・・・再登場『砦の29人』(1966年制作)の画像を使いました。
※かつて私のアマチュア映画作りに協力してくれた友人(私の転勤で30年近く話も出来なかった)と先ごろ再会!
 40年も前に『砦の29人』はお気に入り ・・・ 音楽もいいよ、と私が言ったことを覚えていてくれたばかりか、砦の29人のDVDをプレゼントしてくれました。ハイビジョンで改めて見直しました。岐阜県可児市のKさん!どうも有難うございました。(^-^) 
 
  

この元祖シネラマ方式には、莫大な製作費等とは別に気になる欠点がありました。
それは、3枚の画面のつなぎ目がどうしても目立つことと、映像や音響が最も好ましい状態となるスウィートスポット(特別席)から外れるに従い画像が歪んで見えるということにありました。特に3つの画面を移動するものが不自然に見えるのは、大変気になる現象だったかと思います。
なお、 DVD化された元祖シネラマの映画はデジタル技術で補正されたこともあり、 視聴に支障がないものに仕上がっているようです。(デジタル技術での元祖シネラマの補正事例)
かつて、35mm版で『西部開拓史』を映画館で見た私・・・改めて見てみたい1本です。
西部開拓史の補正前と補正後の比較映像 補正後の西部開拓史の映像例です

【大画面:フィルム時代のスクリーン例】シネラマ、Todd-AO・・・工夫の数々
巨大なスクリーンへの投影には様々な困難が伴いました。特に、元祖シネラマのスクリーンには工夫が必要でした。中心角が150度の円弧ともなると、スクリーンに投射され観客側に向かうべき映像の明るさが、湾曲したスクリーンでは左右部分から相互に対向面を照らしてしまいます。これでは映像にかなりのダメージを与えます。明るい部屋ではプロジェクター画像が見にくくなるのと同じ現象です。
そこで、下の写真の通常の材質・形状を変えて、①②のような小さな穴の開いた幅2cm程のテープをルーバー状に張り、 光の反射がルーバーの裏側や客席に向くように調整しました。
そのため、客席からは見えないある角度では裏側が透けて見えます。
シルバースクリーンからシネラマの巨大湾曲スクリーンへの張替え作業をご覧下さい。
⑦Cinerama Screen 001-1
当初、70mm映写機1台での湾曲スクリーン使用を想定したTodd-AOやその改良型D-150も開発されましたが、120度程の広がりの映像が限界と判断されたのか、結果としてその後は120度までの湾曲スクリーンか大型フラットスクリーンを使ったワイド化の道に進むことになったようです。勿論、適正な補正をおこなえば、どちらへも上映出来たと思います。  
 

【シネマスコープ CinemaScope】 アナモフィックレンズの発明  Anamorphic Lens
一方では、元祖シネラマ映画と平行するように、35mmでのワイドスクリーン映画が20世紀フォックスから発表(聖衣  The Robe : CinemaScope・・・BGMがスターウォーズ、これはご愛敬) されました。その後、日本の映画館もワイドスクリーン化が進みましたが、当初はステージ幅の制限から上部をブラックマスクで覆って横幅を確保するなど、かえって迫力のない映像になったり、サイドのマスクから画面がはみ出すことも多く、 四角くても天井高いっぱいに映る映画に馴染んでいた私(子供時代)にはいまひとつ不満もありました。(笑)
下の写真③⑥シネマスコープ作品です。

また、シネマスコープ(CinemaScope)の上映は従前の35mm映写機に横幅を2倍に伸ばすアナモフィックレンズを装着すればワイドスクリーンに変身!.... でも問題もありました。
同じ映写機の光源を使って画面を拡大すると、当然ながら画面が暗くなります。  ほとんどフラットなスクリーン(若干の湾曲はあり)では、映写距離の伸びる両サイドで一層顕著になったでしょう。(かつて、映画館の映像を撮影したことのある私・・・経験済です。) (#^.^#)
アーク放電 (炭素棒) を利用した光源、その後登場したキセノンランプも改良され、光量増大も進みましたが、大変な高熱を発生することから、さらなる光量増は困難でした。フィルムが燃えたり溶けたりするのを避けた結果、昔の古い映画館では上映中の館内を真っ暗にして、暗い画面をカバーした!?・・・考え過ぎでしょうか?
現在の日本では、消防法等の厳しい規制によって誘導灯は勿論、転倒防止用に座席下の客席誘導灯も基準に従い常時点灯しています。(停電時も一定時間の点灯を規定しています。)

もうひとつの対応にスクリーンの表面加工がありました。(下図)   しかし、汚れた時でも映画館側ではメンテナンスが出来ない等、本家米国の館主もこの設置を敬遠したようです。
スクリーンの表面加工・・・プロジェクターで映画等を鑑賞される方は、いろんな表面加工の製品を検討されたかと思います。(もう、使っていませんが、私も数種類のスクリーンを持っています。)

【懐かしい70mm映画③】そして、35mmのワイドスクリーン映画
⑥西部開拓史 聖衣 その他
西部開拓史は元祖シネラマによる上映もされましたが、その後、湾曲スクリーンへの上映は70mmフィルムによるシネラマ・・・ 多くはスーパーシネラマ方式 (Super-Cinerama) やほぼ互換性のあるD-150での上映となりました。また、通常のスクリーンで対向面への反射の影響を抑えること等から、最大でも120度までの円弧となり、フラットスクリーンでの上映を含め、アナモフィックを使わない70mm映画のほとんどは 2.2:1 のアスペクト比となりました。
なお、ワイド化にアナモフィックレンズを使う35mmでは、70mmオリジナル映像の天地を切り取り、2.35:1で上映されるのが一般的でした。
そして、フィルムの性能向上により、逆に35mmフィルムからの70mmブローアップ版も多く上映されました。掲載した映画のポスター下部のコメントには、オリジナルのネガフィルム情報等があります。)
 
                                   【懐かしい70mm映画④】35mmネガフィルムで高画質70mm・・・スーパーテクニラマ
⑨2017.11.6⑧遠すぎた橋 スパルタカス H700
かつて、フィルム時代には70mm映画というだけで多くの観客が映画館に足を運びました。
上映経費が高額な70mm・・・それでも、当時は採算がとれるくらいの集客が出来ていたと思います。私がたまに見に行った時のほとんどが満員に近かったことを記憶していますので。

そして、70mm映画の製作費を抑える手法のひとつが35mmフィルムからの70mmへのブローアップでした。軽量ながらも高性能35mmカメラの機動性を活かして撮られた70mm映画、ポスター写真下に簡単な情報を載せました。これらの多くは、アナモフィックレンズを装着したパナビジョン (Panavision) カメラが多く使われ、テクニカラー・システムのプリントと共に70mm映画は、絶頂期を迎えていました。
そんな手法が使える改良を重ねた優秀なフィルムが出来る前は、当然ながら大型フィルムの画質が優っていました。そのような状況での発想の転換!・・・これを35mmフィルムで可能にしたのが、ビスタビジョンテクニラマTechniramaでの撮影システムでした。
(追記:ビスタビジョンで撮られた最初の映画は『ホワイト・クリスマス』White Christmas です。2018年9月30日号では主演のビング・クロスビーやローズマリー・クルーニーに触れています。) 
 

フィルムカメラ時代を経験した方は、35mmのスティルカメラにライカ版とハーフサイズがあったことをご存知かも知れませんね。 35mm映画はハーフサイズで撮影されて、上映もハーフサイズでした。一方、ビスタビジョンテクニラマは35mmフィルムを横に走らせてライカ版として撮影し、これを縦走行に変換、35mmに縮小プリントしたり、元の映像の上下をトリミングして、縦走行の上映用70mmフィルムにプリントしました。
なお、スーパー・テクニラマウルトラ・パナビジョンでは、大判ネガの撮影機にアナモフィックレンズを取り付け、ここから70mmへのプリントで一層のワイド化も可能でした。
   (注:映画ポスター写真下部のコメントに、35mm (horizontal 横走行) neg (ネガ), とあるものがこれに該当、
           35mm (
anamorphic) neg, は縦走行の撮影で横幅が半分に圧縮されたもの・・・を意味しています。)

【懐かしい70mm映画⑤】VistaVision, CinemaScope 55, & 35mmのBlowup 70mm
④王様と私  etc
ビスタビジョンやテクニラマの撮影システムは、それまでの35mm映画のフィルムは縦走行という固定概念を脱却した撮影手法だったことは、前項でお話ししました。
そして、たびたび触れてきたように高性能フィルムが手に入るようになると、オリジナルのネガ35mm、上映は音響面も考慮した70mmの立体音響!という選択肢も出来ました。
しかし、多くの映画館は70mmの上映には対応しておらず、ましてや巨大湾曲スクリーンを備えたシネラマ劇場は大都市に限られ、日本国内でも数えるほどしかありませんでした。
元祖シネラマの新作が製作されなくなれば、 シネラマ用の巨大湾曲スクリーンを持つ劇場は、他館との差別化を図るためにも、多くの70mm作品をシネラマとして上映する必要があり、これは海外でも同様でした。勿論、ブローアップ70mm版の多くも、その対象となります。

『では、さっそく上映しよう!』・・・なんて簡単なことではなかったのです。 解決すべき技術的な課題がいくつかありました。
3台の35mm映写機で投影した元祖シネラマの湾曲画面(横幅は多少狭くなります。)に1台70mm映写機で投影すれば、シネマスコープでも触れたように画面が暗くなります。
勿論、70mmでのフラットスクリーンへの投影でも光量は重要な要素です。オーディオ趣味でいうダイナミックレンジは映像でも大切です。大きな音から小さな音まで・・・映像で言えば明るい画面と暗い画面・・・特に暗さの忠実な再現は、時に映画にとって大変重要な映像表現のひとつです。光量が十分確保出来ない劇場では、暗闇のシーンは見えにくくなるばかりか闇にかき消されてしまいます。嘘のような本当の話として、昔、光量が十分でない劇場での白黒映画の上映用に、ポジを淡く仕上げて配給するなんてこともありました。コントラストやグラデーションの低い映像・・・これでは、映画を楽しめません。(下は参考画像です。)
逆さ虹(環天頂アーク) 2013
自宅近くで撮った『逆さ虹』の映像を使って加工しました。 どの画像が良いかということではありません。 映像表現にどの部分を重視するかによって、どれがより適しているか・・・という視点です。①のように淡いフィルムでは、映像にメリハリがありません。光量不足の③は暗部が表現できません。仮に、柵の向こうに猫がいたら①②では見えるかも知れませんね。
猫が不要なら③は迫力があると感じるかも知れません。画像の明暗・濃淡の参考でした。
【参考:CGでの画像修正例等をE.T.の1982年オリジナル版と20周年記念2002年版で比べてみましょう。
 なお、自転車での逃走を阻止する警官隊・・・子供相手に銃を構えるなんて!というオリジナル版への批判に
 対応するため、高額な費用をかけたCGで銃を無線機に替えています。その他にも注目してご覧下さい。】

明るい画面のためとは言え、高熱を発する光源の増強は、ランプハウス等の冷却システムを強化出来たとしても、直接フィルムへ照射される熱でのダメージはゼロではありません。
フィルムが焼き付いたり溶けたり・・・これは初歩的な問題ですからフィルムのパーフォレーション等の損傷を事前にチェックすることで、映写機の空転は回避が可能でしょう。でも、光源の強化だけではフィルムへの熱量が増加・・・心配です。

それ以前からも映像の明るさ向上への工夫は、35mm・70mm共に映写機側の改良がなされて来ました。ここでも発想の転換がありました。いずれの映写機でも1秒間に24コマを間欠的に投影することは、このブログでも触れて来ました。
(但し、元祖シネラマは毎秒26コマ、当初の70mmは毎秒30コマでした。その後、70mmは毎秒24コマが標準となりました。)
そこで、考えられた工夫とは・・・ 1コマの画像が停止している間の光量を増やしてはどうか、 また、照射量が増えれば、その熱でフィルムが反ったりするが・・・等の問題点を検討し、その対策が講じられました。下図は http://graumanschinese.org/projection-2.html 提供です。
●明るい映像への工夫 DP70のシングルブレードシャッター
照射量増加によるフィルムへの熱 ・・・  これは、一層高速となった回転するブレードに送風機の役割を持たせて、冷気をフィルムに吹き付けるような工夫もなされました。
これらの動画は "graumanschinese.org" でご覧頂けます。当初上図 改良後35mm上図 改良後70mm上図

さあ、これで巨大湾曲スクリーンで70mmの大作が鑑賞出来る! いいえ、まだ確認する項目があります。スクリーンと映写室の位置関係が大変重要なんです。 
世界中の多くの映画館では、映写室の位置が画面中心から上にずれていました。仮にあなたが特別席に座って、スクリーンの左右上下の中心辺りと向かい合っているとしても、かなり上の映写室から投影された映像を見ることになるかも知れません。湾曲したスクリーンでも高さは概ね同じですが、このブログの写真でも分かるように、いかにもシネラマらしく中央に向かって滑らかに上下が縮んで見えます。美術の授業で学んだ透視図法そのものですね。

これは簡単に実感することが出来るのでやってみましょう。チラシなど長方形の紙の両端を持って湾曲させ、顔の前で近づけたり遠ざけたりしてみて下さい。同じ高さの紙がシネラマ画面になります。私たちは高さが同じと分かっているので、小さく見えるのは遠くだから、大きく見えるのは近くだからと判断します。しかし、映写機のレンズを通して放たれた光線はスクリーンに向かって広がって行きます。 上下が縮んだように見える中央部への映像も、遠慮なく拡大していくため、中央辺りでは上下がスクリーンからはみ出てしまうのです。
映画館によって、映写機からスクリーンまでの距離や映写角度が異なるため、それぞれ個別に対応することは大変です。この現象を少しでも抑えるために、特別なアパーチャマスクや特殊な補正レンズを貸し出すほか、フィルム自体に補正を施すことも必要でした。

8mm映画から入った私の映画趣味・・・家庭では操作面から背丈を超える高さからの映写は現実的ではなく、私の場合、概ねスクリーン中心部の高さに合わせて映写していました。
シフト機能等、いろんな調整が出来る現在の液晶プロジェクターと違い、8mm映写機本体には前脚の上下、ズームとフォーカスの調整以外出来ないため、これが最良となります。
 (その雰囲気が少し分かる写真がこのブログにあります。’16/2/27の2枚目のオーディオ室写真右端の
  キャスター付
映写機専用台を中央に移動させて映写していました。)


【 湾曲スクリーン上での投影映像の変形 】補正・・・悪戦苦闘
これらの画像、スクリーンの湾曲具合がよく分かるものを選びました。スクリーンの高さは同じなのに、湾曲させることで一層奥行き感が表現出来そうですね。
では、この項のテーマについてのお話を進めていきます。説明用の写真のひとつはTodd-AOで撮影された70mm作品『サウンド・オブ・ミュージック』(フラットスクリーン)の画像を使って、私が作成したもので、実際のフィルムとは違う点をあらかじめご承知下さい。
⑬2017.11.6●※todd-ao-portugal H700-1
多くの劇場は、客席後方の上部に映写室を備えていました。そのため、フラットスクリーンに投影する映像は台形状に下部が拡大します。これは、スクリーン自体を後方に傾斜させることである程度の補正が可能なため、中小規模の映画館の多くのがこの方法を採用していたようです。目の錯覚もあり、慣れれば正常に感じるようになっていたのでしょうね。
しかし、映像がスクリーンからはみ出したり、逆に映っていなければ・・・ もはや錯覚に期待出来るレベルではありません。(以下、光学レンズ関係には触れないで分かりやすい説明だけにします。)

(写真中央)は、理想的あるいは許容範囲の映写角度でフラットスクリーンへ投射した時のイメージです。 65mmフィルムのネガから70mm上映用フィルムに密着プリントが可能で光学的に最も無理のない方法です。 球面レンズ(Spherical Lens) を使用する最も一般的な70mm映画の上映方法で、おそらく皆さんの多くがご覧になった形式です。

湾曲スクリーン正面からの投影イメージで、正にシネラマ、Todd-AO、D-150を最良な状態で上映出来ます。しかし、①のフィルムをそのまま映写するだけでは不満が残ります。
それは、シネラマの欠点で触れたように、中央辺りの上下部分が切り取られてしまうことと、 スウィートスポット(特別席)から外れるに従い画像が歪んで見えるということです。(改めて私が作った画像を見て下さい。)
①と②を比べると、画像全体の構図は同じなのに、②では両端(バスケットにご注目!)に向かって画像がやや縮まっていることが分かると思います。
斜めから投影された映像は、スウィートスポット以外の席の対向面では伸びて見えます。
また、左右に移動するものは、この部分で速度が一瞬上がって見えます。 そこで、最終的な補正として、スウィートスポットとのバランスも考慮してこの形を設定したようです。
但し、ここでは投影した映像の歪みのイメージを説明することが目的のため、映写機のレンズ等での補正機能が必要としても、説明は割愛させて頂きます。
 映写機のアパーチャマスクは、おおよそこのイメージ画像の形だったようです。

の補正はとんでもないものです。説明のために6枚の画像を用意しました。  説明用とは言え、作成には苦労しました。(笑) また、ここでも光学系レンズ等での補正は省きます。
 特許を取った複雑な補正方法・・・とても私では説明しきれませんので、ご了承下さい。


かつて、 70mmを上映してきた世界中の大劇場でも、 その多くの映写室はかなり上方に設置されていたようです。そのため極端な場合、 フィルム①をスクリーンの両サイドに合わせて投影すると映像の中央上部はスクリーンの上部まで届かず、下部はスクリーンをはみ出してステージの床に投影されてしまいます。③の補正は、その逆のプリントを作り、スクリーン上で補正しようというものです。両サイドの圧縮は必要だったと思われますが、 フィルム前のアパーチャマスク・・・どんなものだったのか、見てみたいです。
 そして、これでうまく投影出来たのでしょうか? なんだか気になります。映画館では、映写レンズ等の工夫や苦労話なんて、一度も聞いたことがありませんでしたが・・・。 
 なお、②③ともイメージ画像は説明用のため誇張気味ですので、ご承知下さいね。
※どうしても特許の内容を知りたい方のために、発明者 : ブライアン・オブライエン博士の特許PDFと光学系の補正にも触れた新たな湾曲スクリーンへのアイデア in70mm.comから "Compound Curve Multi-format Screen Design: Ideas and Concepts" をご紹介しておきます。

映写室の様子・・・映写機の設置角度から、かなり下方にスクリーンがあることが分かります。
●Projection rooms H500
いろんな工夫があったことで、皆さんが大画面の映画を楽しむことが出来たのでしょう。
こんな問題を解決するのが仕事だったら ・・・大変だったでしょうね。ここでもプロでなくてよかったと、つくづく思っています。それにしても、技術者ってすごい!ですね。
 
【懐かしい70mm映画⑥】Todd-AO, Panavision 70, .... 驚きのBlow-up 風と共に去りぬ
 posters
これらも、いろんなバージョンで上映された作品ですが、特に『風と共に去りぬ』は1939年の作品・・・何と戦前に製作された映画です。日本では、映画は白黒が当たり前の時代に(日本での最初の長編カラー作品は、1951年にフジカラーで撮られました。) 米国ではこんな超大作がカラーで作られていたのは驚くべきことでした。戦後生まれの私、当然ながらリバイバルを70mmの大画面で見ました。35mmフィルムから70mmへのブローアップ ・・・ この手法はリバイバル上映の時期 (1967年頃)には特別なものではありませんでした。
しかし、これが一般的には退色が進んだと思われる戦前 ・・・ 1939年のネガから作成されたとは思えない驚きの映像でした。テクニカラーの優秀さを実感した映画のひとつです。
※「風と共に去りぬ」は、3本フィルムカメラ(Technicolor Three-strip camera) で撮られました。 光の三原色の各フィルター(赤・緑・青)を通過した光を3本のモノクロ・ネガフィルムに同時に記録するもので、ネガカラーフィルムに比べても劣化が少ないため、その後のテクニカラー・ダイ・トランスファー・プリントの製作での色彩の微妙な調整も可能で、美しい画像を永く残せました。
●映画専門誌のひとつ H1000
テクニカラーシステムは上映用プリント作成のため、 3本のネガからマトリックスフィルムを作成するなど高額で、
他社から以前より格段に改良されたカラーフィルムが提供され始めると、1970年前後から使用が減少し、やがて使用されなく
なりました。
なお、当初は撮影に3本の三原色に撮り分けするモノクロームフィルムを使用していましたが、撮影時のコスト削減や機動性を
重視し、撮影はイーストマンカラー等の1本の多層式発色フィルムを使い、その後にテクニカラーシステムの三原色の3本の
マトリックスフィルムを作り、これにそれぞれ三原色染料を吸着させ、ポジフィルムに印刷するように転写するものでした。)
さらに、米国映画界では得意分野のマルチトラックへの音響の見直しを含めて、古さを感じさせないものでした。でも、ワイド化のために画面の上下で40%がカットされたこの映画、映画館で元の状態(デジタル修復後でも勿論OK)のままを見たいと思っています。

【懐かしい70mm映画⑦】
●※海底世界一周 H700
今回掲載したポスターの70mm映画には、35mmでのワイドや70mmフラットスクリーンでの標準的な上映の他、スーパーシネラマ、D-150などで公開されたものがあります。 前項の風と共に去りぬも、ある時はスタンダード、ある時は球面レンズでの標準的な70mmワイド上映、また、ある時は70mmD-150などのバリエーションがあったようです。このことは、当時の映画館の広告表示がそのようになっていましたので・・・。

また、ごく最近 (2015年) 、キル・ビルのクエンティン・タランティーノ監督によって70mmでヘイトフル・エイト(The Hateful Eight)が制作されました。 この撮影は65mmネガを使うウルトラ・パナビジョンだったのです。そんなカメラがまだ使えたことにも驚きましたが、あのタランティーノ監督の70mmフィルムでの上映へのこだわりと、これを実現した熱意に対して、驚きを超えた敬意を払いたいと思います。

もうひとつ、IMAXとPanavision カメラで65mmフィルムを使用し、一部が70mmフィルムで公開されたダンケルク Dunkirk (2017年)、これは今年のことなんですね。 
監督はバットマン新シリーズ『バットマン・ビギンズ』『ダークナイト』のクリストファー・ノーランです。 日本国内では、ごく一部の劇場で35mmフィルムで上映されたようですが、大型フィルムでの制作にこだわったノーラン監督には、IMAXの大画面は別としても、少々残念な劇場環境かも知れませんね。
そう言えば、この映画で使われた大型フィルムの撮影機にはハッセルブラッドやMAMIYAのレンズも装着されたようです。 大型フィルム時代を経験した私には、どちらもお馴染みの製品ですから・・・・やはり懐かしい。

【懐かしい70mm映画⑧ そして、最新の70mmフィルム映画2本】
⑱2017.11.6●※Song of Norway H700 1970
現在のデジタル・シネマは解像度や色彩等の映像面での向上は言うまでもなく、音響面でもかつてのフィルム映画館の音響を超えるようになっているかも知れませんね。でも、音響面での評価は映像の比較のように、そう簡単ではない!?・・・ そうです。このブログでも度々お話して来ましたが、良いソフトと立派な装置があっても、それだけでは必ずしも良い音や音場で再生できるとは限らないのです。  オーディオ関係に興味のある方は、このブログの『オーディオ趣味編をお訪ね下さい。ブログのPRです。(笑)

ところで、1970年以降、映画館の入場者数はほとんど増えていません。テレビの普及や高画質化、さらには娯楽の多様化が進む中、自宅で簡単に映画鑑賞が出来るレンタルビデオ・・・等々、これに対抗する映画館のあり方も変化して来ました。大劇場は改装や建て替えで、複数のスクリーンを持つシネコンへと移行しています。  良い映画を大勢の人に見てもらいたいのは、私の願いでもあり大歓迎です。良い映画は・・・フィルムとかデジタルとかに関係なく楽しめると思えるようになって来ました。 そして、入れ替え制でなければ、少々追加料金を払ってでも丸1日見ていたいですね。

【昔の映画の割引券】・・・お陰でお気に入りの映画を何度も見ることが出来ました。
●※映画割引券 H700
今回は、懐かしいフィルム映画、特に70mmを中心にお話して来ました。長いお話にお付き合い頂きまして、どうも有難うございました。
なお、 このブログにはシネラマ映画70mm映写について少し触れた号もあります。
をクリックすればその号に飛びますので、どうぞお訪ね下さい。
〔 70mm映画35mmから70mmへのブローアップ映画👈)へもどうぞ。〕 
 
また、近いうちにオーディオ趣味続編・・・そうでした、 ハイレゾにも触れたお話をしようと思っています。今回もご来訪頂き有難うございました。

(お断り:シネラマやD150用のスクリーンを備えた劇場は、今や海外でもほとんどなくなり、日本には1館もないと思います。そのため、説明用の写真等の著作権などの確認も困難で、万一にも本ブログへの掲載に支障があるようでしたら、管理者経由で
ご指摘下さい。速やかに善処させて頂きます。)
謝意:この項目をはじめワイドスクリーン関連の画像等は、以下の情報を参考にさせて頂きました。お礼を申し上げます。

  http://www.widescreenmuseum.com/ ,   http://www.imdb.com ,   cinematreasures.org,   IN70MM.COM ,                  Graumanschinese.org ,   http://home.earthlink.net/~stevekraus/cinerama.html,   http://incinerama.com ,  
  https://www.scienceandmediamuseum.org.uk/cinema , 
  http://www.film-tech.com/warehouse/index.php?category=3 ,  cinematheaters ,
なお、日本語の丁寧な説明で分かりやすいサイトもあります。→ http://www.tok2.com/home/rionawide/index.html

Notice : Currently, theaters with screens for Cinerama and D150 are almost gone in the world, and I think that there is not one in Japan, so it is difficult to check the copyright of explanatory pictures and so on to this blog.  If there seems to be trouble in posting, please point out via the administrator.  I will promptly do the best.
Acknowledgments: For the widescreen-related images etc., I referred to these information above. 
I would like to say thank you very much.