『70mm 思い出の大画面映画 第3弾!』ブローアップ70mm映画のお話しです。おそらくどちらも皆さんのよくご存じの映画!・・・トリヴィアを中心に進めてたいと思います。

さて、映画会社の顔として親しみを感じる『ロゴ』には、これから始まる映画への期待を高める力があるように思えます。映画はワクワクのロゴマークから映画が終わって照明がつくまで、 じっくり見るのが私の流儀!・・・そうなら、なおさらこんなパロディは不謹慎かも知れませんね。 でも、 私のユーモアを解する映画会社は多分これらを黙認してくれる気がします。
    (仮にしばらくの内に、ここから消える画像があるとすれば、クレームが入ったと思って下さい。 
01-Leo the Lion  MGM, etc.
【ユーモア・・・と言えば・・・】
昔々TVで大人向けの真面目な西部劇がありました。『ガンスモークです。マット・ディロン保安官役のジェームズ・アーネス(実弟はTV『スパイ大作戦』のフェルプス役ピーター・グレイブス)そして、 チェスター役のデニス・ウィーバー・・・スピルバーグ監督の『激突』・・・が出演していました。その有名なオープニングシーン、自らがユーモアを込めて作ったものをご覧下さい。(勿論、放映不可ですね。)こんないたずらもありましたよ。(笑)

ここに登場した各社の懐かしい作品から私のお気に入りを列記します。(公開当時の社名表記)
コロンビア映画:『アラビアのロレンス』『未知との遭遇』『エアフォース・ワン』『招かれざる客』『戦場にかける橋』『ラストエンペラー』・・・近年では『スパイダーマン・シリーズ』『007 慰めの報酬』等
MGM:『2001年 宇宙の旅』『グラン・プリ』『ベン・ハー』『ドクトル・ジバゴ』『風と共に去りぬ』
『007 スカイフォール』
20世紀フォックス:『サウンド・オブ・ミュージック』『王様と私』『スター・ウォーズ・シリーズ』『ダイ・ハード・シリーズ』『タイタニック(パラマウント映画共同製作)』『南太平洋』『タワーリング・インフェルノ(ワーナー・ブラザース共同製作)』

02-Leon Roar jurassic park, etc.
パラマウント映画:『インディ・ジョーンズ・シリーズ』『アンタッチャブル』『ゴッドファーザー・シリーズ『ローマの休日』『十戒』『シェーン』『ティファニーで朝食を』『地獄の黙示録』『プライベート・ライアン』『トップガン』『ミッション・インポッシブル・シリーズ』『OK牧場の決斗』『フォレスト・ガンプ/一期一会』等
ユニバーサル映画:『ジュラシックパーク・シリーズ』『ロレンツィオのオイル/命の詩』
ジョーズ・シリーズ』『大地震』『シャレード』『激突!』『トブルク戦線』TV:『刑事コロンボ』『ロックフォードの事件メモ』等
   これらの映画の内、海外を含めて70mmで上映されたことのある作品は青色で表示しました。 
  

トップガン Top Gun】👈(1986)トム・クルーズ、ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー
07-トップガン Top Gun (1986) Tom Cruise and Kelly McGillis
トニー・スコット監督の『トップガンでの成功で、トム・クルーズは一躍注目を集め、現在までその高い人気を保ち続ける大スターへの道のスタートとなりました。 また、 ケリー・マクギリスは、この前年に公開された『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985年)ではレイチェル役で、ハリソン・フォードと共演、『告発の行方』(1988年) では、地方検事補キャサリン役で ジョディー・フォスターと共演してます。 いずれの役もまるで異なる個性を演じています。  
  

では、早速トリヴィアを並べてみます。
・この映画が好評なことに乗っかったアメリカ海軍は、 メジャーな映画館に入隊募集のブースを設置しました。 その結果、映画を見終わってアドレナリンが高まった若者たちを捕まえようという作戦は大成功! それは何年もの間、 入隊志願者獲得数の最高記録でした。 (ブルース・リーのカンフー映画を見た後、 皆が強くなったような。) 
 

トム・クルーズはそれまでバイクに乗ったことがなく、 トップガンのためにバイクの運転を習ったそうです。
映画を見る限り、 私には彼が新米バイク乗りだなんて感じさせませんでした。なお、 トップガンで彼が乗っていたバイクは、 当時世界最速の市販車 
Kawasaki Ninja 900/GPz900R" です。(米国内で販売)そして、努力家のトムはその後バイクや車の運転がプロ級の腕前になりました。 (Mission Impossible:Rogue Nation )

 
・トム・クルーズはケリー・マクギリスと一緒のシーンで背を高く見せる特別なカウボーイ・ブーツが必要でした。ケリー・マクギリスは身長170cmのトムより8cmほど背が高かったので・・・。また、マクギリスは彼と一緒のシーンでは履物を脱ぐことに・・・。でも、そんなこと・・・まったく気にすることはないと思いますが。
■04-Top Gun (1986)
米海軍はこの映画のために実物ミサイル2発の発射シーンの撮影を認めました。 そして、 安定した姿勢の戦闘機からの発射シーンを撮り、いくつかの場面にこれを使いました。ところが、 模型の
戦闘機とミサイルを使った
その他の発射シーンがあまりにも見事だったため、米海軍は当初承認した2発を超えての発射シーンを映画会社に撮らせたのではないか調査しました。(笑)    上の紫色(アンダーライン)の文字をクリックすれば参考映像が見れます。
・パラマウント映画は、飛行中のF-14 (トムキャット) からの迫力ある映像を撮るため、F-14の製造会社グラマンに特別なカメラマウントの開発と設置を委託しました。
 
・パイロット役の俳優のほとんどが実際にF-14の後部座席に乗り込んで飛行中での撮影を経験しました。
ところが
、機内で嘔吐しなかったのは、マーヴェリックの相棒で劇中、戦闘機からの非常脱出で死亡するグース (ニック・ブラッドショウ) 役のアンソニー・エドワーズだけでした。 その後、 彼はTVドラマの『ER 緊急救命室』のマーク・グリーン医師として、シーズン1~8までの180話に出演しました。  
  
ヴァル・キルマーはこの映画への出演を望まなかったにもかかわらず、 契約上の義務からやむなくアイスマンを演じました。ところが皮肉にも、 この役がその後の彼の飛躍につながる代表作のひとつとなりました。本編以外のヴァル・キルマー出演作 (  ) 内は役名:ドアーズ(ジム・モリソン) 、『トゥームストーン』(ドク・ホリデイ)、『バットマン・フォーエヴァー(ブルース・ウェイン/バットマン)、『セイント』(サイモン・テンプラー) 等々 
 
・この映画はタイタニックと同じ『スーパー35』フォーマットで撮影されました。アナモフィックレンズ付きカメラは重く、Gのかかる旋回時でのカメラの転落を避けることやF-14のコックピットに収まる撮影システムからの選択でした。球面レンズで撮影された35mmネガからは、トリミングによっていろんなアスペクト比で劇場版をはじめVHSビデオやDVD版が製作されました。
・上映は、35mmはアナモフィックレンズ使用でアスペクト比は2.39:1、当時のテレビ用に1.33:1、 1998年に  DVD用に2.00:1が準備されました。 球面レンズ使用のブローアップ70mmは2.20:1ですが、 いずれもオリジナルのネガは、スーパー35方式(アスペクト比1.37:1)で撮影されたものです。
 (参考:『スーパー35については、前号の最後の方で概要を述べています。ブローアップ70mm映画 第2弾👈 
 
マーヴェリック役として名前のあがった俳優 ・・・ マシュー・モディーン、
パトリック・スウェイジ、エミリオ・エステベス、ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック、マシュー・ブロデリック、ショーン・ペン、マイケル・J・フォックス、トム・ハンクス   ・・・   彼らは全員これを辞退したとのこと。  さらに、 チャーリー・シーン、 ジム・キャリー、 ロブ・ロー、 エリック・ストルツ、 ロバート・ダウニーJr. たちもマーヴェリック役を検討されました。 候補のひとりチャーリー・シーンは、1991年公開のコメディ『ホット・ショット』で、トップガンをはじめ話題となった映画のパロディー版👈に出演しました。    
  

【ミッション・インポッシブルから・・・】M:I-Ⅲ.Ⅳ 70mmプリントはIMAX用! (例外ながら参考に)
■05-Tom Cruise in mission-impossible-Fallout- etc. 01
ここで扱う70mm映画とは縦走行70mmフィルム映画を指しますので、同じ70mmフィルムでも横走行IMAXは対象外です。とは言っても、 ミッション・インポッシブル・シリーズはトム・クルーズの大ヒット映画!・・・避けて通る訳にはいきませんので、 写真だけでもどうぞ。
 

それにしても、トム・クルーズは撮影中に大怪我を含めて度々ケガをしています。 その訳は、彼が危険なアクション・シーンでもほとんどスタントマンを使わないからです。 ここまでやる俳優って ・・・ 他には、かつての超人ジャッキー・チェンくらいかと思っています。
■06-Tom Cruise in Mission - Impossible
通常、危険なシーン👈の撮影ではアクション専門の"スタントマン"を立てます。俳優が強く望んだからといって簡単に許可されるものではありません。CGでの特撮が多用される現在、 なぜトム・クルーズはそんな危険を犯すことが許されるのでしょうか? 
 

実写映像には、確かにCGや光学合成とは何かが違う生々しい迫力を感じます。このブログでも、 CGスタントマンについて触れていますが、 現実味を失わない程度の"CG"なら違和感を感じないのに、時に過剰な演出が気になることがあります。ドッキリするようなシーンが違和感のあるCG等での特撮だと気付いた途端、 多くの観客はシラけてしまいます。
しかし、トム・クルーズが生身で頑張っている👈のを知れば、一層ひやひやドキドキで緊張感のある映像になります。 これこそ見せる側の狙うところでしょう。 そして、それを実際にやって見せるトム・クルーズは本当に凄い俳優です。 こんなアクション・シーンが撮れるのは 彼の身体能力の高さや役者根性は勿論、 "ミッション・インポッシブル・シリーズ"👈の主たるプロデューサーの彼が自分自身に危険なシーンを演じる許可を与えているのかも・・・ね。 

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未知との遭遇 Close Encounters of the Third Kind スティーヴン・スピルバーグ監督作品
◆ 01-未知との遭遇 Devils Tower and Mother Ship
前号でSFファンタジーの傑作に「E.T.」「ある日どこかで」を挙げていますが、何故この映画を挙げないの?と思われるでしょう。前記の2作は現在の科学ではあり得ない事象ですが、『未知との遭遇』は完全には否定出来ない事象を脚色しながらも、 壮大なファンタジーとして描いています。 その意味で、 1977年に公開された『未知との遭遇』はSF映画として、 正に異色の作品だと思うからです。 
 

それまでのSF映画は、海外・国内を問わず子供だまし!の域を出ないものも多くありました。  元々そんな映画への動員対象は子供!せいぜい子供連れの大人! 勿論、 良く出来た作品もあったのですが、映画好きの私は子供時代から、 特にSF映画の特撮に注目していました。仮にストーリーが荒唐無稽でも、特撮部分が自然に映像の一部として目に入って来るようなら合格! 監督や特撮スタッフのやる気が伝わって来るようで、 楽しめました。
そして、 子供がそのまま大人になったような?私のお気に入りのSF映画、 しかも、 CG等のデジタル画像処理が実用化される前の時代を代表する特撮映画として『未知との遭遇』を取り上げてみました。 これには「オリジナル劇場版」「特別編」「ファイナル・カット版」の3種類ありますが、私にはやはり「オリジナル劇場版」です。 

 
一方では、真面目な作品の中に興ざめする合成シーンもありました。そのひとつが『十戒』(日本公開1958年) で描かれた重要な場面での合成部分です。    岩肌に十戒を刻む激しい光!👈    ラメセス王が率いる軍隊の進攻を阻止する渦巻く火柱!👈さらに言えば、蛇に変身する杖のシーン👈 ・・・ 紅海の割れるシーンと比べても、 はるかに容易だったはずです。 『メリー・ポピンズ』や『ロジャー・ラビット』では大歓迎のアニメ合成手法も、『十戒』には通用しません。デジタル合成が出来なかった時代だったとしても、あの炎は・・・。 
 
なお、 白い眩い光線を別の映像に多重露出で合成すれば、 明かるい光線と重なる暗い映像のその部分が露光されるので、敢えてアニメ風の黄色い炎を合成することもないかと・・・。 一発勝負のポジフィルムの8mmフィルム映画でも、明かる過ぎない風景等の撮影後、必要秒数を巻き戻し、反射しない黒いボードに書いた白文字のタイトルを撮影すれば、 見事に風景にタイトルが写り込みます。 この手法では、風景とタイトルを撮る順番は問いません。
 
 

ちょっと脱線しましたが、異色のSF映画のお話し!(トリヴィア?進めていきます。
◆ 02-未知との遭遇 The lost ship is found in the desert.
この映画のクライマックス・・・そのラスト・シーンは、 まだ (?)人類は経験していません。(?) しかし、 その他のエピソードの数々は、 そんな体験をしたと信じている多数の人々が語った内容を基にして描かれていると言うのです。科学的に立証された訳ではないとしても、 長年にわたって発生してきたUFOとの接近遭遇等の超常現象の中には、頭から否定出来ないものもあるようです。 (あなた!まだ見ていない? UFOはともかく、 映画は是非ご覧下さい。) 
 

そして、UFOが関わる超常現象を解明するためのプロジェクトを米空軍が立ち上げ、ここで科学顧問に任命されたのが、アラン・ハイネック (J. Allen Hynek) だったのです。また、彼はノースウェスタン大学で教鞭をとっていた天文学者でした。俳優でもないハイネックを取り上げた訳は『未知との遭遇』の原題 "Close Encounters of the Third Kind" 第3種接近遭遇の分類を提唱した学者でUFO研究者だったからです。 邦題「未知との遭遇」も内容を反映してピッタリ! 
 
※アラン・ハイネック博士の提唱した『分類』とは・・・

 第1種接近遭遇:空飛ぶ円盤等の未確認飛行物体 (UFO) を150m以下の距離で目撃した場合
 第2種接近遭遇:UFOが生じさせたとみられる物理的痕跡がある場合(身体的被害、 車両や電気機器の障害等) 
 第3種接近遭遇:生物をはじめパイロットや乗員とみられる人間型ロボット等が乗ったUFOとの遭遇した場合

その後、 いくつかのUFO研究機関等がこれに続く分類を提唱し、 さらに細かく分類されました。但し、この映画が製作された当時は第3種までの分類でした。
 
◆ 03-未知との遭遇 The Sounds come from the sky. 01
この分類で言うと、上の2組の写真は『第1種・第2種接近遭遇』となりますね。
なお、この映画の出演者は、アメリカン・グラフィティ』『ジョーズ』リチャード・ドレイファス(本作と同年1977年に公開された「グッバイ・ガール」でアカデミー主演男優賞を受賞)、カンバーセーション ・・・盗聴』『トッツィーテリー・ガー(トッツィーでアカデミー助演女優賞にノミネート)メリンダ・ディロンフランスの映画監督『華氏451 』(但し、これは英国映画です。)のフランソワ・トリュフォーロッキー(同シリーズ)』『プレデターカール・ウェザース(ほんの少し登場)『ライトスタッフ』『エイリアン2、3』『クイック&デッド』ランス・ヘンリクセン子役のケイリー・ガフィー等々・・・。 そして、なんとアラン・ハイネック博士がカメオ出演しているのです。 
 

当時、UFOが人類・・・特に米国にとって脅威かどうかを検証していたNASAと米空軍は、この映画への協力を拒みました。 そして、東西冷戦という背景もあり、国内で大混乱等を起こす危険性から、この映画の公開に反対したNASAは、スピルバーグに20ページに及ぶ手紙を送ったそうです。 空軍が主導するUFO研究プロジェクト(プロジェクト・サイン → プロジェクト・グラッジ → プロジェクト・ブルーブック) の顧問に任命され、当初は科学的な分析でUFOを説明しようとしていたハイネックでしたが、調査を進めるにつれて科学では説明しきれない数々の現象の報告に触れ、その板挟みに苦悩していたとも言われていました。『何かが起こっている!』と考えるようになったハイネックの主張は当初のUFO否定派から肯定派へと変わっていきました。 
 
そして、それはプロジェクトの閉鎖後、 UFO研究センター(CUSOF)を創設して最初の長となり、 さらにUFOの研究を継続する原動力になったのです。 そんな時、スピルバーグから「未知との遭遇」で描かれるエピソード等へのアドバイスとカメオ出演の話が持ち込まれたのです。スピルバーグは脚本の参考にハイネックの "The UFO Experience: A Scientific Inquiry"(UFO体験:科学的調査・・・注:私の勝手な和訳)を既に読んでいたのです。

◆ 04-未知との遭遇 Devils Tower and UFO
『未知との遭遇』で象徴的なシーンとして登場する デヴィルズタワー"Devils Tower" は、米国ワイオミング州にそびえ立つ岩山で国定記念物となっています。
なお、本来なら "Devil's Tower" と表記するところを"Devils Tower" と、アポストロフィが脱落した間違った表記で指定してしまったものの公式な訂正がないこともあり、今では "Devils Tower"  が定着しています。(笑)   また、先住民族の信仰の対象となっているこの岩山は、麓からの高さが東京タワーより高い約386mもあるとのことです。 
・母船
の着陸に適した山岳地帯を見つけるために、美術全般の責任者ジョー・アルヴェス西部地区を4000km以上も駆け回わりました。 そして、このデヴィルズタワーの選択は映画のヒットにも大いに貢献したことと思います。 

◆ 05-未知との遭遇 Mother ship and pretty Aliens
スピルバーグ監督は、この映画の2年前に公開され大ヒットした『ジョーズ』の撮影でいろんな苦労を経験しました。 そのひとつが気まぐれな天候でした。 昔、私自身のアマチュア映画づくり (ポジフィルム使用) の撮影や編集で苦労したことに、 やはり天候がありました。 晴天と雨天ほどの差はなくても、雲の量や影の向き等は勿論、色調・明度・彩度・・・被写体深度等々、 編集を困難にする要素はたくさんありました。  さらには、 屋外セットでの照明の制御等には、プロだからこそ要求される困難を覚悟する必要があるでしょうね。昔の西部劇などの屋外シーンで、人気俳優の姿が暗くなるのを避けるための照明で、人物の影が出来ているのをつらい気持ちで見た覚えがあります。銀レフの方がよかったと思いますが・・・。 
 

そう言えば、 『サウンド・オブ・ミュージック』のオープニング!👈   美しい山々や湖などのシーンが続き、丘で待ち構える ジュリー・アンドリュースに近づく空撮から地上の撮影に変わった瞬間、背景の青空がどんよりした曇り空になっていました。 ネガとポジを使う商業映画では、ポジへの焼き付け時での各種のフィルターや光量等の調整で、私が苦労したほとんどの問題は救済出来ますが、デジタル処理が出来なかった時代は、写り込んだ不要な雲を違和感なく消したり、 雨天を晴天にするのは不可能で、 出来ることと言えば・・・ひたすら待つことでした。 
 

そこで、スピルバーグはこれらの問題を、天候に左右されない屋内撮影で回避することにしました。そして、 撮影場所として決定したのは、 米国アラバマ州モービル市の使われなくなっていた巨大飛行船用格納庫でした。
そこに造られた着陸地点の大きさは、
: 76m、 長さ: 137m、 高さ: 27mもありました。なお、この格納庫は建て替えられて
、現在はブルックリー・フィールド工業団地の17番ビルの5番・6番に位置しています。(笑)
◆ 06-未知との遭遇 Set and Miniatures
・ 格納庫内の撮影は、天候を気にしなくてもよい代わりに、フットボールの競技場より巨大なセットは、大量の照明器具を必要としました。(上の精巧な道路等のミニチュアにはこの巨大セットは使いません。 当然ですね。)
夜景に写る背景のすべての星、 遠くのたくさん木々・丘・道路などは特殊効果(合成)の映像👈です。 また、普通の場面のひとつ  ・・・  ドレイファスが演じるニアリーのトラックが田舎道を走っているシーンもこの手法での映像です。ほとんどの夜間シーンは、 星のないセットでの撮影でしたから。 
 

写真に詳しい人はご存じでしょうが、夜間、照明を使って風景や人物を撮っても背景に星は写りません。星が写るためには、数秒から数十秒の露出が必要となります。ましてや1秒間に24コマ使う映画 ・・・ そのままでは、星は絶対写り込みません。仮に、スティル写真で1枚当たり十数秒間露出してでも撮ろうとすれば、暗闇の中、星空をバックに星の露光が完了するまで、 背景の木々は風にそよぐことも出来ず、 登場人物はその間息を止めて微動だにしないことが必要です。 そして、最後に人物等に適切な光量でフラッシュを一発!   これで背景に星空が写るはずです。では、なぜ暗闇で静止なのかって? そうしないとあなたの顔や服は露出オーバーで白く飛ぶか、なんとか写っていた場合も、今度は顔や洋服の上に星が写り込んでしまうかも知れないからです。  映画ともなると、わずか5秒のシーンでもこれの繰り返しが120回! おそらく出演者のために救急車を呼ぶことになるでしょう。  ・・・ 
やはり、ブルーやグリーンのバックを使う特撮担当の出番ですね。
(この映画の背景の星は、 特殊な用紙に低圧のエアブラシで、白い塗料をプチプチと飛ばして作ったそうです。)
 
・ここのセットを使ったいろんなUFOとの遭遇や母船の着陸シーンでは、 出演者はUFOに見立てて頭上に吊られた照明機器の動きに合わせて演技をすることになりました。そして、それらのシーンを撮影するために、200名のエキストラへの新たな振り付け(動き等の指示)が必要でした。 
 
・ UFOの合成が完了した映像を見たドレイファスは、 こういう映像になるのなら、驚きなどの反応は違っていたとか、 トリュフォーも、無いものを見ているように演技するのは困難だ!との不満もあったようです。 それは、彼らの撮影時期には、まだ母船の姿が未確定で、スピルバーグは膨大な絵コンテのスケッチを見せて説明するしかなかったのです。そのため、双方が母船についての共通したイメージを描けなかったのです。これらも撮影スケジュールの遅れやコスト増を招きました。
そこにないUFOを、あたかも見ているように演技する俳優たちも大変でしたが、実写と特撮を注意深く編集する作業は、スピルバーグはじめスタッフも大変だったことでしょう。巨大なエイリアンの登場で、 人の視線が下方を向いているなんて。しかし、 そんな苦労を感じさせないシーンが次の写真の中央から右方にあります。
◆ 10-未知との遭遇 Close-Encounters-of-the-Third-Kind-
この映画のSFXスーパーバイザーのダグラス・トランブルは、『2001年 宇宙の旅』でも特撮を担当しました。
スピルバーグは、 彼がいなかったらこの映画を作ることが出来なかったと言う程、 信頼をおいていました。 確かに前述した通り、もくもくと不気味に広がる雲、UFOが頭をかすめるように飛来する様などは、本当によく出来ていました。特撮と分かっていながらも驚きの連続 ・・・ さすがにトランブルの仕事でした。
・モクモク雲の撮影はどうやったのでしょうか。3つ上の写真にその現場があります。 その雲! トランブルは、水槽に
塩水を半分入れ、 そこにゆっくりと淡水を満たしました。 次に上層の淡水部分に細いパイプで白塗料を注入すると、 塗料は軽い淡水を通り過ぎ、 より重い塩水の上部で平たく広がっていったのです。 そうして出来上がった雲を実写映像に合成することで、皆さんが見た不気味な特殊効果の映像を完成させました。👈

こういった特撮を、母船や精密な道路の模型製作などを担当した
グレッグ・ジーンたちが支えたのです。
上の左端下、 極端な三角形の道路のミニチュアが、 彼らの手にかかると道路そのものになります。 これも目の錯覚を利用した特撮技術です。 砂漠で発見された貨物船のシーンも、手前から遥か遠くのラクダやヘリコプターまでしっかりピントがあっており、 手前の貨物船が巨大!だと錯覚します。  "F
orced perspective"と呼ばれるこの撮影手法は、 他の映画でも使われています。 (逆に、 本物をミニチュアに見せる私が作った画像もあります。  飛んでる音好き爺 2016.5.30号趣味のごった煮」👈紫部分をクリックして下さい。)

・このセットで撮影されたシーンは上映時間の20%程ながら、撮影期間の50%を占めました。 
◆ 07-未知との遭遇 Close-Encounters-of-the-Third-Kind
上の写真は、クライマックスで登場する母船👈 映画の中のUFOはどれも光で覆われていて全体像がはっきりしません。そこで、 写真で母船の姿をじっくり見て頂くことにしました。 でも、 このままでは様になりませんね。 やはりUFOの出現は夜間限定なのでしょう。   
 

・UFOや母船のイメージ確定には、関係するスタッフは大変苦労しました。しかし、そこにはユーモアを解する彼等らしい遊び心もうかがえます。 それが、上の右方10枚の写真に残されています。UFOの明かりに『スター・ウォーズ』R2-D2! 逆さまに映っています。 さらに母船にもR2-D2、ダース・ベイダー/タイ・ファイター、バス、『ジョーズ』サメ、 郵便ポスト、 お墓! これでもかと言わんばかりに、 かわいい模型が散りばめられています。   勿論、母船のシーンで、これらは ・・・ 小さ過ぎて見えな~い!  とは言え、 母船のSFXのスタッフは、 より複雑な外観を得るため、これらのミニチュアを取り付けたという説明もありますが・・・。(笑)
 

ところで、映画に登場する母船のイメージはどのように生まれたのでしょうか?
スピルバーグは、既に前述の方法でUFOと遭遇する人物のシーンを撮り終えていました。
そして、 その後のインドでのロケで毎日通り過ぎていた巨大な石油精製所の夜景の美しさに触発されたのです。無数の明るいライト! 照らし出される複雑なパイプ群! それまで思い描いていた暗く巨大な母船は、無数のパイプや光で埋め尽くされた明るい母船の姿に変わったのです。  また、着陸する側の底面のイメージは、スピルバーグがロサンゼルスの丘からサンフェルナンド・バレーの街の明かりが広がる夜景を逆さまにして見た時に決まりました。
それまでの暗~く巨大で不気味な母船のイメージは、明るく綺麗で脅威を感じさせない姿になりました。 下に掲載した画像は、「未知との遭遇」の主なロケ地と母船のイメージ決定に貢献した石油精製所やサンフェルナンドの夜景などを参考のため準備しました。(笑)
◆ 09-未知との遭遇 Close-Encounters-of-the-Third-Kind-
なお、これらの多くはPinterest.com 提供の画像を使わせて頂きました。感謝いたします。
こういった写真は、 このブログを立ち寄られた方に役立っていると思っていますがいかがでしょうか。余分な情報も多いかも知れませんが、 興味のあるところを取捨選択して頂ければよいと、 来訪者になった気持ちで掲載を判断しています。楽しんでもらえれば幸いです。(笑)

UFOと音楽での交信を担当するジーン・クロード役で登場した人は、俳優ではありませんでした。セットで使うシンセサイザーのセッティング作業や演奏をテストする技術者だったフィリップ・ドッズの様子を見たスピルバーグが、彼に映画に出演してくれるように頼んだのです。重要な役でもあり、正式にクレジットされる俳優として扱われました。

・映画は、ニアリーの他、選ばれた人たちがこの母船に搭乗して地球を離れていくシーンで終わりました。 それから5年、 母船に乗リ遅れてひとり地球に残される映画が『E.T.』です。 どちらもエイリアンを友好的に描いています。スピルバーグは、『未知との遭遇』の続編のイメージをいつしか『E.T.』に重ねていたのかも知れませんね。
◆ 08-未知との遭遇 Close-Encounters-of-the-Third-Kind-
・ケイリー・ガフィの演技?が素晴らしく、彼の写るシーンは1~ 2回の撮影ですみました。そのため皆からは  "One-Take Cary"と言われました。(一度の撮影でOKとなることを意味します。)
・当時4歳のケイリーは、 母船から降りてくる斜面のシーンで、 滑り落ちないようにバレエ・シューズを履かされましたが、後年、成長した彼はこれが恥ずかしかったと述べています。 小さなエイリアンに扮した子供たちが、少し年上の女の子ばかりだったこともあるのでしょうね。
ところで、 
大勢の人々が迎える中、光り輝くスロープを降りて来る小さなエイリアンたちのシーンを、よ~く見ると、
滑って転んだりしている子を2~3人見つけることが出来ます。ケイリーのバレエシューズは正解でしょう。 だって、バレエシューズを履くことより、滑って転ぶ方が恥ずかしいから・・・・。(笑)
  
ところで、皆さんは『未知との遭遇』を70mm映画としてご覧になりましたか? それとも35mmでしたか? 同じ映画・・・どっちでも変わりない? このブログでも度々触れて来ましたが、 デジタル音響のなかった当時、 35mmプリントはDolby Stereo (マトリックス方式)、一方の70mmプリントは6トラックの立体音響・・・ 70mmプリントでコストがアップしても、スピルバーグは音響面で優位な70mmでの公開を決定しました。そして、大画面と大迫力の音響は、この映画の魅力を確実に高め、大ヒットとなったのです。 
 

また、この映画の特撮が関係するシーンは、 すべて65mmのネガフィルムで撮影されました。 フィルムの映像は、合成するたびに画質が落ちます。合成でも画質劣化がないデジタル処理とは、 ここが大きく異なります。 そこで 70mmの合成処理による画質劣化(粒状性の目立つ映像がざらつく状態)を見越し、 合成のない35mmフィルムを70mmにブローアップした時の粒状性とほぼ合わせることで、 違和感のない特撮シーンが出来たのです。逆に35mmプリントの上映では、 多少の画質劣化も70mmからの縮小で35mmと同等の粒状性が保てます。
スピルバーグをはじめ特撮スタッフのこだわりは、正にプロの仕事への姿勢なのでしょう。
・上映:35mm版 アナモフィックレンズ使用、 アスペクト比=2.39:1、 音響=Dolby Stereo
    70mm版(ブローアップ)球面レンズ、 アスペクト比=2.20:1、 音響=6-Track いずれもメトロカラー
・撮影:カメラ=パナビジョンPSR R-200、パナフレックス、35mm アナモフィック、70mm 球面レンズ
            (特撮に関わるシーンはすべて65mmネガフィルム〔イーストマン〕を使用)

・この映画の音楽を担当したのは、ジョン・ウィリアムズ👈『ジョーズ』でも一緒に仕事をしたスピルバーグからの説明を基に、 映画の編集前に曲が完成していました。これらの曲が気に入っていたスピルバーグは、 通常の作業とは逆に音楽に合わせて映画を編集しました。これによって、 完成度の高い音楽性を失うことなく、 荘厳さなどを伝えることが出来ました。
最後にもうひとつ!未知との遭遇の象徴的なメロディは、スピルバーグとウィリアムズが、数百もの組み合わせの中から偶然に見付け、 二人が気に入ったものだったそうです。

今回号も大変長くなりましたが、最後までお付き合い頂きまして有難うございます。
なお、予定していた『インディ・ジョーンズ・シリーズ』『地獄の黙示録』は、改めて取り組みますので、今回はどうぞご容赦下さい。では、次回のご来訪をお待ちしております。

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