シネラマやブローアップ含む70mm映画については以前特集を組みました。そして、これらに多くの方が興味をお持ちだと感じました。そこで今回は、シネラマや70mmで上映された作品にこだわらず、その第6弾に取り組んでみました。(まずは映画のパンフレットから・・・)
◆映画パンフレット ABC- H750
これらのパンフレットの多くは、ロードショーを見たときに購入したものです。出来の良いものもあれば、そうでないものもあり、比較的程度のよい紙質や印刷のものを並べました。しかしながら、 写真に写るマカロニ・ウェスタンのパンフレットには、 結果としてヒットした映画でもほとんどが印刷物としては今一歩の出来映えのものも含まれます。

さて、今回はパニック映画『ポセイドン・アドベンチャー』の大ヒットで気をよくしたプロデューサー、アーウィン・アレンが取り組んだ超大作『タワーリング・インフェルノ』を取り上げてみました。
 
タワーリング・インフェルノ】 The Towering InfernoThe Opening Credits
   Distributed by 20th Century-Fox and Warner Bros.
   Produced by Irwin Allen    
●①Towering Inferno W3003 H900
1974年に公開されたこの映画は、パニック映画の巨匠アーウィン・アレン製作の大ヒット作品で、その年度で最高の興行収入をあげました。監督はジョン・ギラーミンですが、アクションシーンはアーウィン・アレン自らが監督しています。また、この映画の原作ふたつの小説の映画化権は20世紀フォックスとワーナーブラザースがそれぞれを持っており、 内容が似ている映画同士が共倒れになるのを危惧した両映画会社は共同制作(配給権は米国内は20世紀フォックス、その他地域はワーナーブラザース)に合意しました。  そして、その成功は後の超大作「タイタニック」(1997年公開)で予算オーバーで資金不足となった20世紀フォックスが、パラマウント・ピクチャーズと共同制作することへの期待につながりました。

主演はスティーブ・マックイーンとポール・ニューマン  また、主演の地位を要求したウィリアム・ホールデン ・・・ こちらは受け入れられませんでした。  そして、主演二人のオープニング・クレジットでの苦心の扱い  ・・・  画面の上下では上が上位、しかし、左右では左が上位。これはポスターでもそうなっていますね。(笑)  
 

すでに大スターとなっていたスティーブ・マックイーンの役へのこだわりは、この映画でも問題を投げかけていました。当初、プロデューサーのアーウィン・アレンはマックイーンに建築家を演じることを要求したが、マックイーンはこの映画での建築家という役割に不満がありました。その訳は、「荒野の七人」や「大脱走」でも触れたように、自分が中心となって派手で目立つ活躍を望んでいたのです。一方、元々は別の俳優を想定した消防士長の役割はそれ程大きなものではなく、マックイーンは、自分と同格の俳優が建築家を演じるのであれば、消防士のチーフ役を引き受けると言ったことから、ポール・ニューマンを建築家の役に迎えることになったのです。
しかし、台本が出来た後もマックイーンからのクレームはありました。ニューマンとは報酬をはじめ同等の扱いの筈なのに、ニューマンが他者と交わすセリフの方が12行多いとか。  そして、マックイーンが登場する上映開始から約43分後には、ニューマンは彼のセリフの持分の半分ほどを使っていました。残りのシーンでニューマンが無口になったかどうかは、私には分かりませんが。 
 

こんな状態だったため、後にニューマンはマックイーンとの共演を決めたことを後悔するようになったそうです。 ニューマンは「荒野の七人」でのユル・ブリンナーと同様の気持ちだったのかも知れません。  とは言え、 タワーリング・インフェルノが大ヒットしたことから、マックイーンの要求が単なる大スターのわがままだったとは言い切れませんね。 (笑) 
 

【贅沢な俳優陣】
●②タワー W3087 H900
主な出演者は上のポスターをご覧頂くとして、彼らがそれぞれ共演したスターについて触れてみます。  
 

★スティーブ・マックイーン:ポール・ニューマン主演の「傷だらけの栄光(1956年ロバート・ワイズ監督) で映画デビューしましたが、駆け出しのマックイーンの名はクレジットされませんでした。「荒野の七人(1960年 ジョン・スタージェス監督)と「ブリット(1968年 ピーター・イェーツ監督) ではロバート・ヴォーンと共にドン・ゴードンと、さらにゴードンとは「パピヨン」(1973年 フランクリン・J・シャフナー監督) でも共演していました。ロバート・ワグナーとは「戦う翼」1962年で、 フェイ・ダナウェイとは「華麗なる賭け(1968年ノーマン・ジュイソン監督) で共演しています。  
 

★ポール・ニューマン:ロバート・ワグナーと「動く標的(1966年 ジャック・スマイト監督)と「レーサー(1969年 ジェームズ・ゴールドストーン監督) で共演しました。
なお、ニューマンが再びアーウィン・アレン製作で組んだ「世界崩壊の序曲」(1980年公開) でウィリアム・ホールデンと共演したが、この作品が不評で大赤字!!   ニューマンは出演を後悔しました。 
 

★ウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズは「慕情(1955年 ヘンリー・キング監督)  で共演し、タワーリング・インフェルノは20年ぶりの映画での再会となりました。
また、ホールデンはフェイ・ダナウェイと「ネットワーク(1976年 シドニー・ルメット監督)、 そして、フェイ・ダナウェイはリチャード・レスター監督の「三銃士(1973年) と「四銃士(1975年)でリチャード・チェンバレンと共演しています。 
 

★ロバート・ワグナーはスーザン・ブレイクリー(ホールデンの娘役) と「エアポート80(1979年 デヴィッド・ローウェル・リッチ監督) で共演しています。
 
こうやってみると、多くのスターはいろんな映画への出演でつながっているものですね。 なお、記載内容に もれがあるかも知れませんのでご承知下さい。 
 

【特撮について】Special photographic effects ・・・ L.B. Abbott
●③タワーW2136-TOWERING INFERNOL R
この映画の特撮場面での主役は、タイトルの通り「そびえ立つ灼熱地獄」と化した高層ビルでしょう。映画では、世界一高いビル(138階 高さ550m)の設定ですが、半世紀も経つと550mを超える超高層ビルが続々と建築されています。勿論、 火災対策等は万全でしょうね。(現在の世界一はドバイのブルジュ・ハリファ:828m)

では、この項の本題・・・この二棟の塔はどんな構造物でしょうか。ミニチュアとは言ってもグラスタワーの高さは21m強もあります。しかも内部には特撮に必要な仕掛けがあり、金色の外壁の反対側は構造体が見えます。そして、これらを使った特撮を可能にしたのが、L.B. アボットです。20世紀フォックスの特殊効果部長で撮影技師・撮影監督でした。特殊効果を担当した作品は、 本作品の他、「眼下の敵」(1957)、「ミクロの決死圏」(1966)、(1968)、「明日に向って撃て」(1969)、「パットン戦車軍団」(1970)、「ポセイドン・アドベンチャー」(1972) 等のSFから戦争物の他、「サウンド・オブ・ミュージック」(1965) がありました。 
 

ミニチュアを使う特撮には苦労が付き物です。グラスタワーがいかに見事に造られたとしても、火災や爆発、消火シーンの映像次第で単なる大きなおもちゃになってしまいます。
縮小されたタワーの火災や煙・・・消火に使った水の動き等をミニチュアに見合うように縮小して再現することは、CGが使えない時代では不可能に近いものだったでしょう。
特撮担当のアボットは試行錯誤を繰り返しながらも問題を解決して、あの恐怖の映像を作り上げました。
有難いことに、グラスタワーの火災シーンは夜間!  タワーの裏側は構造体のままのため、いろんな仕掛けを仕込むことが容易になりました。炎を制御する仕掛けは、煙の出ない青みがかった炎を作るブタンの噴射装置、煙が出るオレンジ色の炎を作るアセチレン噴射装置、もうひとつが、それらが大きな焚火の炎のようにならないように空気を吹き付けて炎を攪拌する装置でした。それぞれのガスの着火はスパークプラグで制御しました。 そして、3日間のテストの結果、火災の撮影は通常の3倍速の1秒72コマが適していることが分かりました。 また、物や水の落下にはさらに高速のコマ数での撮影が適していました。
●④タワー w3021 H773-comment space 0001
左端は超高層ビルのグラスタワーを見上げたフレッド・アステアのシーンへとつながる撮影風景です。しかし、巨大とは言えミニチュア! そびえ立つグラスタワーを見上げるアステア目線と錯覚させるためには、カメラをぐっとタワーに寄せたり、もっと低い位置にカメラをセットしなければなりません。しかも、上から下までピントが合った画像でなければ、逆にミニチュアを強調することになります。コンクリートの地面に大きな撮影機を埋め込む ・・・とても現実的ではありません。そこで、アボットは鏡を使うことで、大きなカメラで必要なシーンを撮ることにしたのです。 
 

皆さんは、西部劇等で機関車が観客に向かって爆走! ついには撮影機に激突!と感じさせた映画を見たことはありませんか? でも、 ご安心を! 高価な撮影機を簡単には破壊しません。
例として、線路脇の安全な場所に撮影機を設置し、線路の中央に必要な大きさの鏡をセットします。そして、鏡に映る機関車がカメラをが向かって来るように見える角度に、 それぞれを設定すればOKです。 あとは・・・ご想像の通り!  爆走機関車は鏡一枚を破壊しただけで、観客を恐怖に陥れます。 でも、 飛び散る鏡の破片でスタッフに危害が? これも大丈夫です。 スタッフやカメラは衝突現場の手前ですからね。なお、必要があればネガを裏焼にして左右を揃えることになります。 (笑)
もうひとつ! 落下物のシーンでもこれが使えます。石でも卵でもトマトだって観客に落とせますが、撮影方法の説明は・・・ もう不要ですね。但し、どちらも現場の後片付けが大変でしょう。
CGを使えば、 そんな苦労なんて要らないって? そうですね。半世紀以上前の特撮担当にメールしておきますね。・・・ 可能なら・・・。
●⑤ w3208 H900 -2022-02
「タワーリング・インフェルノ」のパンフレットと「サントラ盤」 ・・・  映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズ作品です。そして、何気なく書棚の奥にある長めの望遠レンズに目をやると、まるで高層ビルのようだったのです。そこでちょっと並べてみた訳です。 
 

上の写真右下段のヘリコプター・・・スティーブ・マックイーンを釣り上げて飛ぶシーンです。ところが、ヘリが風にあおられて墜落してしまいました。でも、ご安心下さい。墜落したのはラジコンのミニチュア・ヘリコプター! しかし、これを見た現場で待機している医療班役のひとりドロシーが墜落現場に駆け寄り、マックイーンに見立てた人形を救助するかのようにカーゼに包み、叫びました。 "Don't worry, Steve, I'll save you! " 『心配しないで、スティーブ! 私が救うわ!』 周辺のスタッフからは、その勇敢な行為に笑いと共に拍手が起こりました。
 
当初、アーウィン・アレンはオープニングのヘリコプターのシーンではジョン・ウィリアムズのメインテーマを使わないつもりでした。
20世紀フォックスの音楽部門の責任者のライオネル・ニューマン(20世紀フォックスのロゴのバックに流れるファンファーレの作曲家アルフレッド・ニューマンの弟)のアドバイスでジョン・ウィリアムズはこれにちょっと手を加えて、晴れてメインテーマが使われることになりました。  それは、アーウィン・アレンとタイトルの文字の出るタイミングに合わせて盛大にシンバルを鳴らすというものでした。 (笑) 
今回号の上部 The Opening Credits の左方をクリックしてお聴き下さい。
モーリン・マクガヴァンの主題歌『We May Never Love Like This Again (愛のテーマ)』もお聴き下さい。(アカデミー賞歌曲賞受賞:作詞・作曲アル・カシャ/ジョエル・ハーシュホーン)
  
中央は、タワーの外部に沿って設置されたエレベーター (レプリカ) から転落するジェニファー・ジョーンズ役のスタントです。下方にスタント用エアバッグがあると分っていても、後ろ向きに落ちるなんて恐怖が倍増するでしょうね。
その下は、タワー屋上に近い階のタンク! どの部分がミニチュアのタンクでその他がマットペイント ・・・ さすがにプロの仕事 ・・・  さっぱり分かりません。オープニングなどで遠くにそびえるグラス・タワー の背景等もマットペイントとの合成が使われています。
なお、ミニチュアとは言え、タンクには約3トンの水が入ります。また、当時のマットペイントはすべて手描き!お見事! 
 

ところで、映画ではタンクの総水量は100万ガロンらしいのですが、日本では馴染みのない『米ガロン』です。1ガロンの水の重量は約3.8 kg ! 字幕でもタンクには380万リットルの水!とありますから、いかに映画とは言え、あの超高層ビルの上部にそんな巨大なタンクを設置し、 満水にする設計には無理があるように思っています。 (笑) 
 

保安係主任のジャーニガンに扮するO.J. シンプソンが見つめる中央保安室の機器類は本物のコンピューターです。但し、この映画が公開された1974年の20年ほど前の1954年にIBMが製造したもので、当時ソ連の爆撃機の動向を探る機器でした。爆撃機がミサイルに代わると真空管技術の機器等は時代遅れとなり廃棄したものですが、その外観に映画での活用を期待した映画やテレビ会社がこれらの一部を買い取りました。(SFのTVシリーズ『タイムトンネル』やSF映画『インディペンデンス・デイ』でも登場)
 
【撮影後の出演者の笑顔と共演者の他の注目作品の例】
●⑥ towering 慕情  W1683 H800
『タワーリング・インフェルノ』では、グラスタワーのオーナー役ウィリアム・ホールデンの娘婿で、 最後まで悪役となったリチャード・チェンバレンの名誉挽回もあり、 その後の注目作を組み入れてみました。
昔々、TVドラマで『ベン・ケーシー』と並ぶ人気を集めていた『ドクター・キルデア』の主役を務めたのがリチャード・チェンバレンでした。ここに掲載した作品は「キング・ソロモンの秘宝2/幻の黄金都市と求めて」・・・ シャロン・ストーンとの共演の第2弾!
そして、もう1本の「将軍 SHŌGUN」では、ウィリアム・アダムス・・・日本名 三浦按針役、三船敏郎や島田陽子らと共演しました。音楽はモーリス・ジャール、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」「グランプリ」等で知られた作曲者ですね。 
 
ウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズについては、『慕情』を取り上げてみました。若い人たちには見ていない人が多いかも知れませんが、テーマソングはおそらく一度は耳にしているでしょうね。
なお、ジェニファー・ジョーンズにとって、タワーリング・インフェルノが最後の映画出演作でしたが、その35年後の2009年12月17日 90歳の長寿をまっとうしました。
 
さて、次回は、『タワーリング・インフェルノ』とほぼ同時期に公開された『大地震』の特撮を主に進める予定です。どうぞご期待下さいね。 
今回もご来訪頂きまして有難うございます。
 

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